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Channel: 残雪、もとめて
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ライトアップに...

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以前は、まったく感じなかったことだが、

最近、クリスマスに向けてのライトアップが、やたらに目に障るように感じてしまう

街にあっては、それほど不似合いと言うものでもなく

何気なく、ただ綺麗なものだ、と歩きながら時折目を向けるくらいだった

ビルの灯かりや、ネオンなど、

普段から街の灯かりは、混沌とした光に溢れている


そこに、ライトアップのような、整然と彩られた景観は、もう普通になっていた

しかし、ちょっとしたことがきっかけで、

こうした景観に少しばかり不満を持つようになった


それは、この晩夏から晩秋にかけて訪れた、明日香の「夕暮れ」に見惚れてからだ

奈良でのライトアップの催しは、何度となく楽しませてもらった

たとえば、吉野の紅葉のライトアップなど、

山深い、その静けさを感じさせる闇の空間に映える紅葉は、確かに美しい


でも、たった一度目にした...

夕暮れの明日香からの帰路、二上山の鞍部に「日が沈む」のではなく、

そこに、「夕暮れが染まり始める」光景を目にしたとき

二上山のシルエットが、こんなにも美しいものなのか、と感動した

空を覆う暮色の倦怠感、二上山の鞍部に籠もる「鮮やかな夕暮れの色」、

それをしっかり受け止める二上山の山稜の際立ち

夕暮れの色が、鮮やかであればあるほど、その下の漆黒の山容は、美しく映える


その光景が忘れられなく、何度も明日香の帰りに、それを期待する

秋にかけてから、日の沈む時間も早まり、天気さえ良ければ、つい長居をしてしまう


石舞台から二上山を望む視角に、その美しさを何度も求めてしまう


そんなとき、気付いたのが...照らし出すライトアップではなく、

「シルエット」の美しさを存分に教えてくれる、日の光の贈り物だ

石舞台から二上山を、そんな中で眺めたとき、

人工の照明は、ほとんど見ることがなかった


夜とは、こんなものだ...いや、これが「夜の美しさ」だ、と心で呟く

日も沈めば、月明かりが、その役目を引き継ぐ


風の音を知り、月明かりにその陰を教える木々の、揺らぐ姿を目に感じさせる

私は、多い繁った木々の下から、空を見上げるのも好きだ

冬枯れの、枝だけを見せる木々も好きだが、木洩れ日の中で見上げる空もいい


ライトアップの中で、紅葉を見上げる闇の空は...そこは「黒い色」

しかし、月明かりの中で見上げる木々の空は...「夜の色」がある

そして、紅葉であろうが、新緑の枝葉であろうが、そこに「夜の空と木々」の色が見える


考えてみれば、いにしえ人は、そんな夜を見ていた

そして、そこに感嘆し歌を口ずさむ...歌を詠う...


今年の私は、まったく「ライトアップ」を追いかけなかった

あの二上山のシルエットを見かけなければ...こんな変化はなかったのだろう...


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