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Channel: 残雪、もとめて
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室内楽の調べ

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気取ったタイトルになってしまったが

ピアノトリオの奏でる調べは、その芸術性を評するのではなく

ただただ、生演奏に聴き入ることの感動を与えてくれた

身を奮わせるほどの感動、と言うのではなく

気づけば、奏でられる曲に楽しみ、胸を熱くさせている自分を知る

 

 

 

明日香の万葉文化館で、このところ隔週で無料コンサートを開催している

演奏者は、奈良フィルの奏者たちが代わる代わるやってきての演奏らしいが

私は、前回(1月31日)の「金管五重奏」で初めて知り、今回は二度目になるが、

ピアノ、ヴァイオリン、チェロの「ピアノトリオ」

奏者は、いずれも若い女性たちで、そのせいか、撮影の許可ももらえなかった

まあ、前回が特別だったのかもしれない

 

 

 

この演奏会で、初めて感じたことがある

勿論、オケを中心としたコンサートは、何度も聴いたし、

今日みたいな室内楽も、これまで住んでいたところでの「地元の奏者」の演奏を多く聴いていた

それでも、何故今日は特に今まで気付かなかったことに、気付いたのだろう...

 

おそらく、違うことと言えば、その聴く環境の違いなのだろう

それしか思い浮かばない


ビデオで視聴する音楽、CDで聴く音楽

そこから聴こえてくる「音色」は、紛れもなく「高め」られたものであり

私も、そこに「完成された」あるいは、パッケージとしての「音楽」を聴いていた

この曲の、このパートでの、この楽器の音色は固定されたものとして無意識に聴いていた

しかし、今日は...

初めて知らされる

 

 


それは、弦楽器を奏でるのは、弓で弦をこすり付けて引くからだ、と

解り切ったことだ

しかし、何故か今日の演奏では、それをしきりに感じてしまう

ああ、この音色は、弦のこすれる音なんだ、と


オケの場合、耳を研ぎ澄ませて聴くことはなかった...それでも容赦なく音楽は入り込んでくる

しかし、こうした室内楽は、奏者ひとり一人の息遣いが、そのまま演奏に反映されている


そして上述したように、「万葉のふるさと」で聴く調べ、ということも

私には重要な想い入れになっている

今まで、コンサートで聴く演奏は、そもそも開演前まで、こちらも「構えて」しまう

そう、聴く準備を知らないままに、自分に課している

今日は、どうだろう

そんなことは、まったくなかった


「冬の春日の明日香」を歩きたくなって、陽気に誘われるように明日香に来た

いつものように、冬なら十分なのに、陽気は春で、その色づきは冬のままとは

中途半端な明日香の景観だ、と少々気落ちしながら、それでも暖かな陽射しのもと...

 

 


そして、万葉文化館の駐車場から降り、まず庭園から歩き始め、祝戸へ向かうつもりが

今日のコンサートの案内を知る


そうなると、散策の時間的な余裕もなく、あわてて図書室に駆け込み、調べ物

こんな私にとっての、いつもの「明日香」で聴くことになる「コンサート」は、

やはり、街中で聴く「コンサート」とは違うものなのだろう

 

 

 

今日の曲目は、クラシックとタンゴ

クラシックは、目を閉じてしっとり聴くことができたが

タンゴの演奏が始まると、目をしっかり見開くかのようにして、聴き入っていた

舞台の背景には、全面ガラス張りの窓から、明日香の自然の雑木が見える

そこにも、今日の「春日」が射している

いにしへの...万葉の時代の光景を想像しながら聴くことになった

不思議なもので、私の場合、万葉に時代を想像すると、いつも重々しい「色彩」が付きまとう

しかし、今日の万葉のふるさと明日香は、どこまでも眩しい陽射しを浴びせられて、

これまでの「万葉の時代」いや「飛鳥の時代観」を一変させてくれた

そんな感慨に浸りながらの鑑賞...

 

 

 


 

ここでやっと気付く、

この演出もまた、「万葉の時代」の「夜明け」なのかもしれない、と...





 


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