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Channel: 残雪、もとめて
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明日香に暮れて

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これまで、何度も明日香へは行っているが、

日暮れまでそこにいる、ということはそれほど多くない

奈良と違って、歩くところもその範囲は限られるし

何よりも、日が落ちれば、本当に暗がりばかりだ


昨日、明日香の万葉文化館で、調べ物をして、久し振りに夕焼けを見ようと

石舞台周辺で待機したが、

日が沈み始めると、まだ空は薄っすらと明るくても

その町並みは、かなり暗くなる


文化館の図書室の職員さんと、これまでも何度か、

いずれは明日香に住みたい、明日香で人生を終えたい、などと話をするが

昨日のその会話の中では、

夜になると、明日香は本当に真っ暗になる、と言われた

言われてみると、確かにそんな気もする

整備された街灯があるわけでもないし、ニュータウンのような住宅街もない


おそらく昔ながらの地形そのままに、民家が建てられたのだろう

以前遺跡ガイドのボランティアの方から聞いたことがある

明日香を考古学的に掘り起こす計画があっても、現時点でその二割も実施されていない、と

確かに、どんどん計画通りにことが運べば、

かなりのところで、杜撰な管理を行わざるを得ないだろう

いたるところで、「遺物」「遺構」「塚」の類が出土し、その都度記録管理、埋め戻し

中には、歴史的な発掘になった場合には計画自体の見直しもある

あるいは、最終的な計画そのものも破棄しての保存も...


それほど、明日香は貴重な土地柄ということだ


先ほどの、夜の明日香は、真っ暗、という話を昨日は目の当たりにする

石舞台から、遠望できる「二上山」を、何とか赤く染めて、と願った

徐々に赤味がかかってくる二上山

しかし、それよりも先に、手前の石舞台が、闇に包まれ始めた

 

 

 

ああ、これが明日香なんだあ...そんな感慨を強く持った

それでも、この有名な構造物の周辺

夕方になり、もう誰もいなくなる

遺跡を宣伝する「商機」とは無縁の、どこまでも「町の有り触れた景観」の一つであることを知らされる


山間のこの町が暗くなって、しずかに夜を迎えようとしている

しかし、西方に目をやれば、かなり目立つ山々のシルエット...二上山の厳かな姿

古代の人々も、こうやって暮れに佇む山間から、威厳を見せる山々のシルエットを眺めたのだろう


明日香には、何もないどころか

現代では望み得ない多くのものがある

万葉の原風景...夜になれば、それが一層感じられる


 


そうそう、一日一首でも書いたが、

ここ石舞台での夕暮れ待ちの間、ベンチの足元に、三粒のどんぐりを見つけ

時間潰しに、それで「どんぐりの背比べ」を楽しんだ

三粒では、寂しいと思い、その周辺を探したが、まったく見つからない

諦めて、その三粒を立て始めた...それが、なかなかうまくいかない

もとより平らなテーブルでもなく、ましてどんぐりの底だって、平らじゃない

あと一粒、というところで、何度も隣に指が触れて倒してしまう

かと言って、距離をあければ「背比べ」の絵にはならない

次第に本気になってしまって...


  

と、何とか夕暮れまで時間を潰すことができた


棚田にポツンと穴があく

最近その調査結果が話題になった「都塚古墳」...




高松塚古墳のような、大規模な整備をするのでもなく

何気なく歩けば、素通りしてしまいかねない素朴さ

入り口に立たなければ、まったく気付かないこの古墳

これも、明日香の魅力のひとつだ


万葉への想いが、万葉集からこうも景色を愛でさせるものなのか...

今回の文化館図書室での収穫も、こんな風に、明日香を見させてくれる





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