先週末、奈良・明日香のルートをいつものように楽しもう、と出かけたが
夕方帰宅してすぐに、病院から電話があった
入院中の義父の容態が悪化して、「そろそろ」だと...
この数年、何度か入退院を繰り返していた義父
今回はほぼ三ヶ月ほどの入院となったが、まさか、と思いつつ病院に向かう
そして、日付が日曜日に変った頃、義父は眠るように息を引き取った
今までなら、奈良を歩くにしても、
比較的賑やかな界隈を歩いたものだが
この日は、不意に高円の白毫寺に行きたくなった
山腹にある、その山寺は、
以前ほど行かなくなったが、やはり私には掛替えのない「山寺」であり
いつ行っても、参拝客や観光客は少なく
その上、奈良盆地を見渡せる眺めが好きで、奈良には欠かせないルートなのだが
何故か、このところ足も遠のいていた
それが、まだ「萩」の季節でもないのに、行きたい、と思わせる
今となっては、私の奈良好きを知っている義父が、
今回は「萩」でも見つけて来いよ、と向かわせたかのようだった
週明けに、喪主として通夜、告別式を終え
昨日今日、そして明日も役所の手続き関係で動かなければならないが
その合間に、気分転換に古書店に立ち寄り、
ここでもまた、思わぬ「物」に出合う
井上靖「氷壁」の新聞連載の時の挿絵画集「氷壁画集」(生沢朗)だ
この画集は、松江の実家にも、私が幼かったころから今日に至るまであるが
実家の「画集」は、まだ山に興味がなかったころに目にしたので
ただ、そこにあるな、というくらいのものだった
しかし、後になってとても興味を持ち出したのだが、その頃は...「ふるさとは遠し」
たまに帰省しても、つい忘れてしまう
その「画集」に、不意に出合った
しばらく向かえなかったここの「ブログ」に、少しばかりの気力を持たせてくれた
白毫寺、いつもあの鄙びた石段に魅せられて行くのだが
刈り取られた「萩」の後では、それほど興味もなく
それに、寒桜の季節でもないのに...何故か行きたい、と思った
まさか、そこで「小さい秋」に出合うとは...
山門を過ぎると、人ひとり分ほどの空間を残し、萩の草木がせめてくる
これほど圧倒されるのは、少し予想外だった
しかし、目の当たりにするその景観は、「これぞ白毫寺」と言いたくなるほど見事だった
境内には、色づく様子もなく、僅かばかりの夏の名残程度を見せはしたが
見渡せる奈良盆地を、しばし佇んで眺めていると
季節に関係なく、この地の美しさを再認識できる
宝蔵殿の裏手には、鮮やかな「トレニア」の花
「秋」...秋なんて、実感できるものなど、まだまだだ、と思いながら
この静かな境内を後にすると、その帰り掛けに、思わず「小さい秋」を見つけた
上ってくるときには気づかなかった「白い小さな萩の花」、その近くに「紅萩」
何気なく歩くと、見逃しそうなほど小さく僅かな「花輪」だが、とても可憐で美しい
彼岸の頃がピークと聞くが、今年はどうも早いようだ
圧倒される萩の枝に、まだ息を潜めるかのように控え目に咲く萩の花
ここに、初めて「小さい秋」を見つけた
今回の奈良は、それだけで充分だった
そして、明日香へ向かい、図書館でひとときを過ごしてから、今回は早目に帰路となる
今日の明日香万葉文化館前
この早目の家路、それが、結果的にジャストタイムで病院からの連絡を受けるのだが...
今夜は、「氷壁画集」の挿絵と本文で時を過ごそう